「あ……花穂」

「なぁに、お兄ちゃま?」

「星が出てきたよ……」

 夕暮れの帰り道、屋根の間に見つけた輝き。

「え? どこどこ?」

「えっと……あの看板の……」

 

 

一番の輝き

 

 

「ん〜、もう少し上かな……」

「えっと、えっとぉ……」

 胸の前に二つの握りこぶし、頑張っている表情。

 ……だから、ほんの少し不安。

「看板から、少しだけ左で、真っ直ぐ上」

「う〜んとぉ」

 必死に空を見上げる花穂……足元、微妙にお留守。

「きゃあ……」

「おっと……」

 胸の辺りで小さな背中を抱き止める。

 瞬きをした花穂が理解するまでに、二秒ジャスト。

「お、お兄ちゃま……」

「痛くなかった?」

「う、うん……」

「なら、それでよし」

 そのまま左手を回して、支えてあげる……シャツ二枚越しの暖かい身体。

「こうすれば、見上げるの楽だろ?」

「お兄ちゃま……」

「もっと、寄りかかっていいよ」

 ふわり、と力の抜けた背中と笑顔。

「えへへへ……」

「はははっ……」

「それで、お星様は?」

 花穂の顔の隣に右手を……最初から、こうすればよかった。

「ほら……あそこ」

 その瞬間、弾む声。

「お兄ちゃま、もう一つお星様出てるよ?」

「ホントだ……二つ目は、先を越されたな」

「わぁ、嬉しいなぁ……」

 胸の中すぎて、上手く覗けないけれど……

 一番星も二番星も……太陽さえも敵わない花穂の笑顔。

 

 

END